バイクの祭典「第52回東京モーターサイクルショー」でバイク王は、ヤマハ発動機の名車として名高い「R1-Z」を衆人環視の中で分解してみせた。貴重なバイクなのだから、そーっと展示しておけばよさそうなものなのだが、いったいなぜ、バイク王は分解することにしたのだろうか。

  • 東京モーターサイクルショーのバイク王ブース

    なぜ分解? みるみるうちにエンジンや外装類が取り外されていったヤマハ「R1-Z」

バイク王の整備力が白日の下に?

最近はバイクもクルマも旧車が人気。旧車に長く乗り続けるなら、購入する店舗の選択が重要だ。

古いバイクだと、調子のよさそうな個体でも、何かのきっかけで、エンジンをいったん降ろさなければならないようなメンテナンスが必要になることも珍しくない。そんな大掛かりなメンテナンスをオーナーが自ら行うには、かなりの知識と経験が必要になる。実際には、購入店などに修理を依頼するケースが多くなるはずだ。

ここで問題になるのがショップの整備力。店頭に並ぶバイクと違って、ショップがどんな整備を行っているかを目にする機会はあまりない。

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    バイク王は「スペシャル整備実演パフォーマンス」と題して、ヤマハ「R1-Z」のエンジン積み降ろし&分解を実演。ブースではバイク王の熟練整備スタッフと一緒に簡単な整備を体験できる「整備教室」も実施されていた

バイク王が実施した「スペシャル整備実演パフォーマンス」は、「ブラックボックス化」しやすいショップの整備にスポットを当てた。使用したのは、1990年に初代モデルが登場したヤマハ「R1-Z」(アールワンズィー)。パフォーマンスを担当したのはバイク王 つくば絶版車館の鈴木裕司さんだ。

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    クルマとバイクを合わせて40年以上のキャリアを持つベテラン整備士の鈴木さん。現在は1日に3台ほどのバイクをバラしているそう

ここからは、写真とともにダイジェストでパフォーマンスの様子をお届けする。

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  • バイクをスタンドアップし、ハンドルにカバーをするとともにブレーキを固定。作業中に傷つけないよう、フレームには養生テープを貼る

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  • 作業はシートから始まり、タンク、サイドカバー、マフラーと次々に取り外していく

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    外装類やマフラーが取り外された「R1-Z」。次はいよいよ、エンジンの取り外しに移る

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  • スプロケットカバーを外すと顔を覗かせるドライブスプロケット、キャブレター、ラジエーターなどの周辺装備を順に取り外していく

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  • 2ストロークエンジンの排気タイミングを変える「YPVS」を取り外したら、エンジンスタンドをセッティング。フレームの一部を分離し、エンジンを車体から取り外した

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    ついにむき出しとなった「R1-Z」。同様の作業を行う際のアドバイスとして鈴木さんは、「ネジが緩まない場合がありますが、その場合は温めたり、ケミカルを使ったりして、時間をかけて作業していただければ」と話していた

こうしたライブパフォーマンスは時間の制約もあるが、そもそも、整備力がなければ企画すること自体も難しい。それをあえて実施したところに、バイク王の自社の整備力に対する自信を感じた。

ところで、「R1-Z」ってどんなバイク?

せっかくなので、今回、バイク王によって「むき出し」の状態にされてしまったヤマハの名車「R1-Z」についても振り返っておきたい。

過激を極めたレーサーレプリカへのアンチテーゼとして、バイクらしさへの原点回帰となるネイキッドブームに沸いた1990年代。「R1-Z」はネイキッドスタイルとレーサーレプリカの血を引く高い走行性能を併せ持つモデルとして登場した。

  • 東京モーターサイクルショーのバイク王ブース
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  • 市街地やワインディングを中心とした走りの楽しさを提唱した「R1-Z」。「スペシャル整備実演パフォーマンス」に登場したのは1992年式モデルだ

最高出力45ps/9,500rpm、最大トルク3.7kg-m/8,500rpmを発揮する249cc水冷2サイクルクランク室リードバルブ並列2気筒エンジンは、初代「TZR250」のエンジンをベースにリファインしたものだ。

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    「R1-Z」の249cc水冷2サイクルクランク室リードバルブ並列2気筒エンジン。1992年式では馬力自主規制の強化にともない、最高出力40ps/8,500rpm、最大トルク3.4kg-m/7,500rpmへとパワーダウンしている

具体的には、吸排気系の徹底的な見直し、デジタル制御のCDI点火方式や低中速域でのレスポンス向上を狙ったミッションレシオ設定の採用などによって、パーシャル性能を高めている。これにより「R1-Z」のエンジンは、扱いやすい街乗り重視の味付けながらレーサーレプリカに比肩する性能を誇り、パワフルな2ストロークエンジンの特性を存分に引き出せる仕様となっていた。

外観デザインのポイントにもなる右出し2本のクロスチャンバーは、バンク角と適正なチャンバー容量を確保したエキゾーストパイプにカーボンサイレンサーを組み合わせる。静粛性に優れた心地よい2ストロークサウンドは、ヤマハ独自の排気音解析機を駆使して作り出したという。

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    「R1-Z」のクロスチャンバー

徐々に2ストマシンが姿を消していく中でも、1991年、1992年とマイナーチェンジを繰り返しながら生産を継続した「R1-Z」。しかし、1999年の排ガス規制の強化によって販売が終了するとともに、長きにわたったヤマハ2ストマシンの歴史も幕を閉じた。