女優の今田美桜が主演を務める連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)。8日に放送された第29回では、朝田家で豪(細田佳央太)の壮行会が盛大に行われ、そして、蘭子(河合優実)と豪が互いの思いを伝え、出征前、最後の夜を2人で過ごすという展開が描かれた。制作統括の倉崎憲氏に、蘭子と豪のストーリーがどのように生まれたのか、また演じた河合と細田の魅力について話を聞いた。

  • 連続テレビ小説『あんぱん』豪役の細田佳央太

    連続テレビ小説『あんぱん』豪役の細田佳央太

112作目の朝ドラとなる『あんぱん』は、アンパンマンを生み出したやなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルに、何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。小松暢さんがモデルのヒロイン・朝田のぶ役を今田美桜、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を北村匠海が演じ、脚本は中園ミホ氏が手掛けている。

第29回で、蘭子が「きっと戻ってきてよ」と豪に伝えると、豪は「無事戻ってきたら、わしの嫁になってください」とプロポーズ。蘭子は「うち、おまさんのこと、うんと好きや」と答え、羽多子(江口のりこ)に送り出されて、その晩を2人で過ごした。

細田はもともと、嵩の弟・千尋役のオーディションに参加していたが、豪役にぴったりだと思ってオファーしたと倉崎氏は明かす。

「柳井千尋役のオーディションには、次世代のエースを担う方々にお集まりいただきました。細田さんの芝居や佇まいを見た時に、絶対に豪にハマると思ったんです。豪は職人気質で無口で“釜じい”(釜次/吉田鋼太郎)をリスペクトしていて、真面目な男で、細田さんとお会いしたときに寡黙な男が似合うと直感的に思いました」

そして、「彼はすでに多方面で活躍されていて、映画主演など素晴らしい作品を数多くやっていらっしゃるので、果たしてセリフが少ない役で出ていただけるだろうか」と断られる可能性も考えていたと打ち明けつつ、「とにかく真摯で真面目でストイックという細田さん自身の人間性と豪のキャラクターがリンクするものがあったと思いますし、今までの映像を見ても、豪が細田さんで非常によかったなと感じております」と完成した映像を見ても適役だったと確信しているという。

視聴者の涙をそそった蘭子と豪が一緒に夜を過ごすシーンについては、「我々も試写段階から号泣していました」と明かす。

「あのシーンに限らずですが、もう二度と戻ってこない時間をどう生きるかというのは、現代にも通ずるテーマだなと思っていて、その象徴の一つがあのシーンだなと思っています。豪が出征しないといけない。帰ってこられるかどうかわからない。2人にとって一旦、最後の時間なので、チームとしても大事なシーンと位置付けていました」

試写で見たときはとても手応えを感じたという。

「細田さんと河合優実さんの芝居を見た時に、この2人だからできた距離感というか、出来上がったシーンだなと思っていて、彼らの佇まいや表情を含め、仕草一つ一つが、その瞬間しかないあの時間を、役を通して生きているんだなというのが本当に伝わってきたので、全1億2000万人に見ていただきたいシーンになりました」