こんにちは。think-cell Japan代表の松塚です。
前回のコラム「年収1,000万円を超えられる人と超えられない人の違い」では、私が外資系IT企業の現場で見てきた"成果を出して出世していく人"の共通点についてお話しました。
予想以上の反響をいただき、多くの方から「具体的でリアルだった」との声をいただけたのは嬉しい限りです。
今回はその第2弾として、私が日々のビジネスの中で「仕事ができる人」に共通して感じている、"シンプルなメッセージ"の重要性についてお伝えしたいと思います。
これから活躍していく、または転職して高みを目指していく人にとってもお役に立てる情報になると確信しております。
「上手に話す」ではなく、「余計な情報を削ぎ落とす」
外資企業の本国のCEOなどとのリーダー会議では「Concise」という言葉がしばしば出てきます。Concise=簡潔という意味で、ビジネスのスピードを加速するために余計な情報を削ぎ落として端的に情報を発信することがトップレベルでは求められます。これができている人は私が会ってきた人の中でも多くはありません。
たとえば売上が下がった要因について―――。
「営業の離職が続いており、採用が追い付いていないし、この点については……(3分説明)、そうだ、そのうえで競合が最近攻勢をかけてきて……(3分説明)、残っている営業人員は全力を尽くしているのですが、そういうような事情で現在売上が減っていると思います」……。
ペラペラ饒舌に話すわりに、結局何が言いたいのかわからない話になってしまった、というケースを何度見てきたことでしょうか。
本コラムではConcise=簡潔を目指しながら必要な情報を抑える技術について解説していきます。
結論ファーストで話すことがプロの第一歩
「で、結局何が言いたいの?」
これは、会議や報告の場でよく聞かれる言葉です。話が長い、背景説明がくどい、要点にたどり着かない。そんな人に、信頼は集まりません。
メッセージにおいて重要なことは、相手の脳に無駄に負荷をかけないことです。こちらからわかりやすさを提供することがビジネスにおいての鉄則です。
優秀なビジネスパーソンは、結論から話すという基本を徹底しています。外資では"Bottom line up front(BLUF)"という言葉もありますが、まさに「最初に結論を持ってくる」ことが求められます。某有名外資メーカーではまず1秒以内に結論を出すというコミュニケーションルールがあるほどです。
また、話す内容が複雑になるときほど、構造化された話法を活用しています。たとえば
・OREO構造(Opinion → Reason → Example → Opinion)
意見→理由→具体例→もう一度意見。説得力を高めつつ簡潔に伝える技法。・CAR構造(Context → Action → Result)
背景→行動→結果というフレームは、実績報告や面接などに最適。
これらの型を意識するだけで、話の筋が明確になり、受け手は"自分の頭で整理し直す手間"から解放されます。構造で語れる人は、それだけで信頼されるのです。
短い言葉で核心を突く=パンチラインを意識する
映画やドラマの名シーンに「決め台詞」があるように、ビジネスにも"パンチライン"は必要です。人は自分の話をそんなに覚えてはくれません。記憶に残る一言は、ただの情報を「意思」として相手に届けます。
有名なもので言うと
「Apple is going to reinvent the phone/アップルは携帯電話を再発明します」(スティーブ・ジョブス)
「The biggest risk is not taking any risk/最大のリスクは、リスクを取らないことだ」(マーク・ザッカーバーグ)
「自民党をぶっ壊す」(小泉純一郎)
など記憶に残るものが多数あります。
私自身もパンチラインは意識するようにしており、毎商談何かパンチラインを用意しています。
たとえば私がITツールの営業としてレガシーな大企業のお客様にプレゼンした際に、「今の古いやり方に慣れているというのは、組織全体が不便に対して過剰に適合しているのではないでしょうか」とお伝えしたことがあります。
この一言で議論の雰囲気が変わりプロジェクトがスタートしました。
資料も10秒で理解できるレベルに
メッセージのシンプルさは、会話だけではなく資料にも現れます。私の経験上、一流のビジネスパーソンほど、資料が驚くほどシンプルです。
複雑なデータや情報であっても、メッセージのポイントを整理して端的に伝えることが重要です。1スライド1メッセージなどの基礎的なものもありますが、読者の皆様には2つの技法をお伝えしたいと思います。
1.グラフは最適な型を選び、色で強弱をつけてメッセージを絞る
同じデータとメッセージでも伝わりやすいグラフの型と色の強弱でメッセージの強さが大きく変わります。
例を挙げると……
上記のように優秀なビジネスパーソンはデータに合わせたグラフ選択と強弱のつけ方の技法を持っています。
文章ではなく、構造で伝える
文章で伝えるのは相手の読解力に依存するコミュニケーションであり、本来はこちらが整理してわかりやすく伝えるべきです。ボックスで整理する手法を使えば情報が簡潔になります。
資料とは"読んでもらうもの"ではなく"伝えるためのもの"です。見る側が1秒でも迷うようなら、それは作り手の責任。10秒以内で理解できる資料になっているかを自らに課すことが、メッセージを届ける力につながります。
情報量よりも、伝わる強度
私たちは日々、大量の情報に囲まれています。だからこそ、「たくさん話す」「たくさん書く」では伝わらない時代になったとも言えます。これからの時代に成果を出す人は、情報の"量"ではなく、"伝わる強度"で勝負しています。
結論ファーストで話し、構造化し、余計な要素を削ぎ落とし、短い言葉で本質を突く。これは相手に対するコミュニケーションのおもてなしです。今回の内容が、みなさんの“伝える力”の向上のヒントになれば幸いです。