
「日本の財政状況はギリシャよりよろしくない」
5月19日、石破茂首相が参院予算委員会で述べた発言が波紋を広げている。
政府が巨額の債務残高を抱えながら、日銀は利上げに転換し、国債消化など、財政運営に世界の機関投資家から厳しい視線を向けられている中での発言を海外メディアは速報。自民党や経済官庁、金融機関などからは「日本国債への信認を損なうような発言はどういうつもりなのか」と驚きを持って受け止められた。
28日の衆院財務金融委員会で、加藤勝信財務相は、この首相発言について問われると「同じ認識だ」と明言。政権への疑念に拍車がかかった形だ。
同委員会では財務省の事務方も野党の”標的”に。首相発言に関し「財務省が答弁書を書いたのか」と問われた吉野維一郎主計局次長は「事務方が用意した答弁書に沿って発言したものではない」と指摘。「債務残高の対GDP(国内総生産)比がギリシャを含めた他国と比べて高い水準にあることを念頭に置いて、日本の財政が厳しい状況にあることについて言及したもの」と述べた。
さらに加藤氏は、事務方に倣うかのように「指標で見ればギリシャよりも悪いということを言いながら、現下の日本の財政は大変厳しい状況にあるとの認識は私も首相と一致している」と言及。野党議員が国益に反するのではないかとただすと「私自身、自国の国債の危機をあおったことはない」と反論した。
財政を巡っては、野党各党が物価高対策として消費税減税を主張しているのに対し、自民党は財政規律を重視する立場から慎重姿勢を貫いている。
実際、日本の公的債務はGDP比で2.6倍になっていて、財政再建は急務。消費税減税の議論においては、裏付けとなる財源をどう確保するかを含めた、トータルな税体系のあり方を議論すべきである。